セブンイレブンの電子マネー「nanaco」

セブンイレブンの電子マネー「nanaco」

一方、この分野で最大のトピックといえるのが07年4月から始まった流通大手のセブン&アイーホールディングス「nanaco」とイオングループ「WAON」の電子マネー対決だろう。

 

東京地区のセブンーイレブンー500店で始まったセブン&アイーホールディングスの電子マネーnanacoのサービスは、07年5月には全国1万1700店で利用できるようになった。約3ヵ月で400万件の会員を集める人気で、年間目標の1000万枚の半分近くを獲得する好調な滑り出しとなった。しかも、月間取扱件数が3000万件を突破するなど、早くもEdyを凌ぐ利用率でポテンシャルの高さを見せつけた。

 

nanacoの導入でレジの光景が変わった。特に昼食時など混雑するときには、カードを読取機にかざすだけで、レジで40秒かかっていた支払い時間を約10秒間短縮することができるため行列が少なくなった(セブンーイレブン)。さらに事業者側にとっては、電子マネーの導入で現金のハンドリングコストが軽減されるため、事業コストの削減に繋がると期待されている。

 

nanacoが人気になった理由の一つにnanacoポイントがある。税抜100円ごとに1ポイントつき、それを1円単位で買い物に使うことができる。1%というポイント付与率は一般のクレジットカードの0.5%に比べれば2倍の高さで、大きな利益実感を味わえる。

 

nanacoは全国のセブンーイレブンで販売するほとんどの商品で一律1%のポイントを付与し、その原資はすべて本部が負担するという画期的な仕組みを作った。Edyのようにフランチャイジーがそれぞれ負担するわけではないので、その費用は相応なものとなるが、セブンーイレブンがこのような思い切ったポイントサービスを実施できるのも、営業利益率が高く体力に自信があるからだ。もちろん、nanacoホルダーは別途ポイント会員などになる必要はなく、満遍なくポイントを貯めることができる。

 

さらにセブンーイレブンは、販促のツールとして携帯電話を重視する姿勢をみせている。同社はカード募集と同時にケータイ会員(nanacoモバイル)も募集している。カードは300円(税込)の手数料がかかるが、ケータイ会員は手数料なし。つまり、優遇している。というのも携帯電話こそ、セブンーイレブンのマーケティングの切り札とみているからではないだろうか。実際、ケータイほど顧客囲い込みに適したツールはない。24時問いつでもメールを送受信できる。

 

たとえば「あなたの好きなシャケ弁当が本日は50円引き」「メール登録者限定。2000円以上お買い上げの方、マグカップ進呈」などのメールをいつでも送信できる。ケータイ会員を増やせば増やすほど店側は、自らの意志を直接伝えることができるのだ。

 

nanacoの設計と運営にはアイワイカードで実績を積んだJCBが全面的に協力している。加盟店開拓や相互利用でも深い関係にあり、07年7月にはJCBのOkiDokiポイントがnanacoにチャージできるようになった。さらにJCB加盟店でnanacoが使えるようにネットワークづくりも積極的に進めている。セブン&アイーホールディングスはJCBのネットワークを使って拡大しようとしているし、JCBはnanacoを自らの自由になる「JCBマネー」にしようと考えているようにみえる。互いにメリットがあるうちは二人三脚で進んでいくのだろう。